ファンのための企画ではない“府民無料デー”の正体
6月27日に大阪ドームで行われたオリックス×楽天の試合は“大阪府民デー”と銘打たれ、大阪府民は無料で観戦することが可能だったらしい。「らしい」というのは、自分はこの試合に全く関心がなかったからだ。
「○○在住の人は無料です」という企画そのものは、前身の近鉄時代から恒例になっているもので、一昨年も昨年も行われたもの。見てるのか見てないのか知らんが、身分証明書を提示すると自由席に無料で入場できた。
無料招待日の客は変な人が多く、阪神戦のチケットを取り損ねたからヒマ潰しにきたと言わんばかりの軽薄な輩がいて、まじめにパリーグの試合を観戦しにきた客にとっては迷惑この上ない日だったが、それでも普段より少しでもたくさんの客が入れば選手にとっては励みになるだろうし、こういう機会を通して1人でも多くの人間がパリーグの魅力を知ってくれるきっかけになるならと、それは理解し受け入れてきた。
しかし現実はどうだったかといえば、無料招待でいくら客を増やしても、それは球団の経営を圧迫するだけであった。鮭の河登りではないが、のちにリピーターとして球団に金を落として頂かなければ無料招待の意味など無かったのだ。それどころか「無料招待日は変な客が多いから」という理由で、普段はお金を払って見に来る客足さえ遠のけてしまったのでは本末転倒。これがファンサービスだとするなら、一体どこの誰を対象に、どのような目的を意図したものであったのか、是非教えて欲しいものだ。
その企画の発想は良かったかもしれないが、中身が全くなかった。一見、素晴らしいサービスを提供しているようにみえるが、その先にあるべきビジョンが全く見えてこないのでは、近鉄球団のやってることは単なるボランティア行為である。その結果、「垂れ流しの赤字」を理由に球団を手放す近鉄だが、その経営の実態が如何に放漫なものであったかを探るのに、この無料招待イベントは格好の物差しであると思っている。
そして今年、近鉄とオリックスが合併し、地域色より企業色を優先した結果、フランチャイズが何処にあるかも分からず、誰からも愛されることのない異質な球団・オリックスバファローズが誕生した。大阪では大阪の球団と名乗り、神戸では神戸の球団と名乗る無節操さは、もはや語るまでもあるまい。
今年も“大阪府民無料デー”は組まれた。試合前、両監督に花束を贈呈したのは太田房江知事。この女、大阪の球団が消滅の危機に瀕している頃も我関せずと、隣県の球団にお熱を入れていた売国奴の知事である。今さら、何をしにきたのか。どうせ1時間ほど試合を見たら席を立ち、家に帰ってサンテレビでも見るつもりだろう。去年はそうだった。大阪府知事も大阪市長も、球場に来ても決してゲームセットまで見届けたことがないのだ。無論、バファローズファンが集まるエリアには座ろうとしたことも一度さえなかった。サービスをしているような顔をして客のいうことを一向に聞き入れない球団と、その球団が呼んできた府民の声を聞き入れない知事。府民招待が形骸化していることはここからも窺えるというものだ。
そもそも、タダで試合を見せる以前に、分別のある人間ならばオリックスなんて応援する気にはならないだろう。オリックスという企業が、プロ野球という公共財にどういったダメージを与えたか、賢明な人間はまだ忘れていない。百歩譲って、この種の企画が野球場に活気を呼ぶために有意義なものであるとしても、オリックスにとって「無料」はセールスポイントとならないと断言する。見境もなく、とりあえずやりましたというだけならサルでも出来るわけだが、そのサル並みのことを実際にやってしまうところにオリックスのプロ野球への了見の無さが端的に証明されている。
昨年同時期の無料入場客は8500人。このうち何人がリピーターになったのか、近鉄は全く把握していない。調査すらしていない。この日の入場客、約2万人。そのうち無料入場が1万人。その1万人が、有料入場者としてリピーターになる確率はどれくらいなのだろうか。近鉄もオリックスも、無料で客を入れるだけで、事後のリサーチを入念にやっている形跡はない。神戸で行われる花火ナイターもそうである。経営とは、サービスを提供することではなく、提供の見返りを得るまでを指す。その程度の基本すら出来ていない会社が、経営を傾いたとしてそれは当然の報いだ。
55年間も大阪に本拠地を置き続け、球団名に「大阪」の冠まで付けた近鉄バファローズですら、その程度にしか扱わなかった大阪である。既に無意味なものであったにも関わらず、オリックスが同じ企画に片足を付けたところで誰のためにもならないのではないか。それでも続けるには何か別の意味があるのではと疑わざるを得ない。
今回は、府から「身分証では煩わしいので府の広報誌を持参した者を入場させてはどうか」という提案があったという。実際、府の広報誌を持っていくと、それだけで奈良県民だろうが和歌山県民だろうが問題なく入場できたという。大阪府によると、府の広報誌、つまり「府政だより」は年に9回発行され、大手新聞では折り込み広告としてこれを配布しているところもあるという。また府内の公共施設や、警察、病院、駅などで容易に入手することができるという。
大阪府民無料デーを終えた府広報課は、報道機関に対して「広報誌が府民の方々にかなり読まれていることを実感した」という談話を残している。そう、大阪府は野球なんか、いやオリックスの野球なんかどうでもいいと言っているに等しいのだ。野球と通して、広報誌を露出できればよいだけなのだ。あまつさえ地元の球団を大切にできない大阪の土地柄にあって、地域を軽んじたオリックスに突きつけられた、これが大阪の答えである。
球団は地域を裏切り続けた張本人。客にとっては全く無意味なサービス。地域の色物として扱う行政。それでもオリックスが府民デーをやる意義とは何なのだろうか。次回の広報誌にはデカデカと載るであろう「オリックス、大阪ドームに府民無料招待」。結局、宣伝目当てであることは明らかだ。
改革だと大騒ぎしているのに、実際は何も変わっていないどころか、むしろ逆行と後退を繰り返している日本のプロ野球界。オリックスとその周辺の相関図は、正にその縮図である。その中心に位置しているのが、府民無料招待というイベント。ファンサービスのようなふりをして全くファンのためではないこの企画は、オリックスの企業宣伝と大阪府の広報活動を報告する場に過ぎず、最低限のマーケティングリサーチさえ行われることなく、阪神に媚びず慎ましやかに野球を楽しもうという大阪の野球ファンの望む「大阪の球団に活気を」という願いなど微塵も反映されないものである。
近鉄ファンとしてではなく、いち大阪府民として言わせていただく。つまるところ、オリックスバファローズなんて球団、大阪には不要である。心おきなく出て行ってほしい。こんな球団が居座るくらいなら、球団のない街にでもなったほうがよほど健全とさえ思える。何もオリックスのケツの穴を舐めてまで、大阪に球団が必要ということはない。無くなれば、また作ればいいだけだ。そこにあるオリックスよりも、出来るかどうかも分からない未来を追う方が、よっぽど夢がある。













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