1年半ぶりの藤井寺球場
奈良から帰りの道すがら、小腹が空き、久々に馴染みの店でラーメンでも食おうと、羽曳野によった。昔、野球観戦のあとよく立ちよった店だ。カウンター席しかない小さな店、マスターは知る人ぞ知る無類の近鉄ファンだ。
色々と話をしているうちに藤井寺球場の話になった。私は、一昨年秋の二軍最終戦を最後に、藤井寺球場には行っていない。マスターは何度か近鉄電車で前を通ったが、いつも球場には背中を向けるようにしているという。マスターが「バイク貸したるから、ちょっと見といで」という。あんまり乗り気にはなれなかったが、断るに断れないので、観に行くことにした。
私が知っている平日夜8時過ぎの藤井寺球場は、天高くそびえ立つ照明灯のカクテル光線が暗闇の中に光のドームを形成していて、駅に電車が止まるたびに何人かがその光の方へ早足で駆け、打ったのか打たれたのか時折どよめきが上がる。だが、現在の藤井寺球場には、光も声もない。
結界が張られ、中の様子をうかがい知ることはもちろんできない。暗くてよく見えないが、目をこらすと、球場の外壁が見える。かつては、赤・青・白の装飾が施され、派手さだけでなく荘厳さもあった立派な外壁だが、いまは見る影もない。
近鉄藤井寺駅の方へ歩いてみた。街頭の下で群れる高校生、黙って携帯を操作する大学生、疲れ顔で帰路を急ぐサラリーマン、ありふれた近郊の風情が垣間見られる。既にシャッターを下ろした商店も少なくない。人々は普通に暮らしている。しかし、どこか熱気を感じない。
休みの日には自転車をこいで観に行った。学校帰りに制服も脱がずに観に行った。正面でチケットと買い、半券をもらって、球場に入る。通路には、酒の匂いと醤油の焼ける匂いとトイレの芳香剤の匂いとグラウンドから流れてくる芝生の香りが混ざった独特の匂いが漂う。
眩しいスタンドに出る。絶景とはこのことをいうに違いない、フィールドを一望する。ダミ声のオッサンが野次を飛ばす。バットがボールをとらえた音はもちろん、ゴロが弾む音、送球が風を切る音、ミットが速球を受け止める音、色んな音が聞こえた。この音こそ、人間が息づいている証というものだ。
かつて祭と宴の場であったスタジアムも、無機質な鉄筋コンクリートの塊である。耳を澄ましても、遠くから電子音が聞こえるばかりで、球場からは何も聞こえない。とても寂しい気持ちなった。やっぱり来るべきではなかった。
マスターにバイクを返した。話の肴に餃子をサービスしてくれた。店内のテレビには阪神の試合が映っていた。

宮西晃宏騎手が4月28日(金)付けで引退することになりました。27日(木)の最終レース終了後、引退セレモニーが行われます。宮西騎手といえば、記憶にも新しい昨年の姫路白鷺賞、デビュー12年目の重賞初勝利(ウエイトフォー号)。あの涙の勝利騎手インタビューが忘れられません。













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