2008年のJBCは園田競馬場で開催!
園田でGⅠや!
大きな夢が叶ったような気分。「できそうや」とは聞いとったけど、「できるで」と決まってもしばらく信じられんかった。
〔JBC実行委員会ニュースリリースより〕
アメリカのブリーダーズカップに範をとり、生産者の提唱によって創設された『JBC(=Japan Breeding farms' Cup)』は、我が国のダート競走における各カテゴリーのチャンピオン決定戦として定着し、ダート適性に優れた名馬を輩出してきました。
この度、NAR地方競馬全国協会(東京都港区)で開かれた平成18年度第2回JBC実行委員会で、来年第8回(2008年)のJBCを11月3日(祝・月)に「園田競馬場(兵庫県尼崎市)」で開催(クラシック1,870m スプリント1,400m フルゲート12頭立て)することが決定しましたのでお知らせいたします。この度、2008年JBCの開催場として園田競馬場が選定されましたこと、誠に光栄に存じております。JBC協会並びにJBC実行委員会の皆様をはじめ、JBCの実施に向けご尽力を頂いております関係者の皆様に深い感謝を申し上げます。
関西での初めての開催となりますが、地元の競馬ファンは勿論、全国の競馬ファンにダート競馬の面白さを楽しんでいただきたいと思っております。
第8回JBCの成功にむけて今後も関係者の皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。兵庫県競馬組合 副管理者 小畑則幸
何がいいって、1870メートルなのがいい。中途半端と言われようが、園田のクラシックディスタンスはこの距離だ(当初の計画通り、3・4コーナーの奥の森を切り開いていたら2000メートルが取れたんだけど)。どうせなら、スプリントは1230メートルでやってほしかったところだが、1400メートルの方が不利のないレースが期待できる。果たして地元馬は何頭出走できるのだろうか…。
一昨年の秋、第5回のJBCが名古屋で開かれることになり、園田競馬場をはじめとする全国の地方競馬場でプレイベントが催されていた頃のこと。
「園田でJBCをやりたいなぁ…」
馬主になって半年、ようやく馬主席にも何人か顔見知りができて、そんなこんなでなんとなく雑談しているとき、私はボソっと言ってしまった。
「無理に決まっとる」
答えを聞くまでもなかった。その場には、組合の人もいたんだけど、「こいつ何言ってんだ?」的な冷たい視線を感じた。その場は、冗談めかして切り抜けた。
たしかに、園田にJBCを誘致するなんて、金がかかりすぎる。下手を打てば、競馬場の存亡の危機にもなりかねず、リスクが大きすぎる。そんなことは言われなくても分かってる。しかし、誘致をせずに指をくわえておれば経営安泰かといえばそんなことは絶対にありえないわけで、誘致を前提とせずとも、「どうやれば園田でJBCを成功させられるのか」という議論くらいはあってもよいと思った。内輪の人間の意識改革なくして、園田競馬の未来はない。そう確信した。
「いつかはここでGⅠをやりたい。いや、やらなきゃダメなんだ!」
三・四十代の若い人の中には、耳を傾けてくれる人もいなかったわけでもない。ただ、私ごとき零細には何の発言力もなく、それが歯がゆかった。組合の人と雑談する際には必ずといっていいほど「JBCを呼んでみーひんか」と囁く“サブリミナル作戦”を敢行してみたが、真顔で言っても冗談のように思われているのではないかという猜疑心が芽生えるほど、反応は鈍かった。
ところが、いつからか、少しづつ風向きが変わりはじめた。これまで「JBC」や「GⅠ」といっても「ウチには関係ない」という態度だった組合が、妙なほど積極的に関心を持つようになったのである。
JBCは、当初の構想とは裏腹に、ある程度の財務基盤がある競馬場、つまり南関東地区の競馬場にしか誘致できない大イベントになりつつある。GⅠレースを2つも引っ張ってくるのだから、競走の格を保つには開催競馬場にそれ相応の持ち出しが求められるのは当然のことだ。問題は、地方競馬側は見切り発車を急いだことにはじまる。「持ち回り」の発想は素晴らしいが、それを実現することが不可能に近いという現実は、結果として地方各主催者の連携不足と統括機関の見通しの甘さを露呈したということに他ならない。
これまで、南関東以外では盛岡と名古屋が誘致に成功し、かろうじて興行を成立させる売り上げを記録したが、渡った橋は傍目に見てもかなり危ないものだった。しかし、何度も言うように、この経営的なチャレンジを放棄して内輪で囲い込んでいれば安泰かといえばそんなことは決してない。渡る橋は危なくとも、渡らねば向こう岸には到着しない。少なくとも盛岡と名古屋は、危ない橋を渡りきったのである。
事実、園田の組合がJBCの誘致を前向きに検討しはじめるようになったのは、名古屋競馬場でのJBC開催が成功したあとである。名古屋競馬場でのJBCは、それはそれで幾つかの問題を抱えたまま終わったが、同ブロック内で交流もあり、競馬場の規模なども近似している名古屋のJBCは、園田にとって直接比較しやすい前例でもあるからだ。このブロック内では、金沢競馬場も、名古屋のJBC終了後、将来の誘致を検討しはじめたほどである。
今年のJBCは大井競馬場で開催されることになっているが、2001年の第1回以降、その開催地は大井が4回、盛岡、名古屋、川崎が各1回と、東西バランスでいえば東6回、西1回である。園田での開催が手を挙げて早々に実現できた背景には、一定の配慮もあったことが察せられよう。
名古屋での成功が、園田が誘致に踏み出す契機となり、うっすらとした自信の裏付けとなっているのは間違いのないところだが、今後予想される道のりは決して平坦ではない。まず何より、2008年の秋まで競馬場が存在していなければならない。
昨年の売上は、難波場外効果もあって前年比微増。園田のみならず全国的に地方競馬の収益は下げ止まりがかかりつつある。ただ、売上は微増したものの、県への上納金を満たすまでには至っておらず、切り崩してきた基金も昨年度で底を付いており、今年度は前年以上の赤字決算を余儀なくされる。来年度さらに売上が回復すると仮定した場合も、基金が底を付いている現状では、今年度と同様の決算になる。県公庫が課す理不尽なノルマが元凶であるが、県にはあらためる姿勢などなく、公庫への貢献が途絶えたとして、いよいよ存廃問題の議論が本格的に開始された。
その日まで競馬場が存続したとして、課題はそれだけではない。“競馬の祭典”を開催する以上は、胸を張って全国の競馬ファンをお迎えしなければならない。
- 課題1 競馬場を「あらゆる意味で」キレイにする!
- 全国の競馬ファンの注目を集めるんだから、恥をかかないようにしなきゃいけない。敢えて「あらゆる意味で」って強調したのは、ゴミを拾えとか、手すりの錆をとれとか、壁を塗りかえろとか、騎手の待機小屋を建て直せとか、そういう見た目じゃない部分の改善が必要だからだ。
- たとえば、チャイルドスペースで大人が寝転がっていて、子どもが入って遊べない。指定席でノミ行為(としか思えない行動)してるヤクザさんを、警備員が黙認してる。こんな競馬場では来てくれるお客も来てくれない。
- 来てくれたお客さんに「また来よう」と思ってもらえるなら、それはJBCの売り上げよりも貴重な競馬場の財産になる。園田競馬場は、大阪・神戸の都心から近く、アクセスは決して悪くない。むしろ全国の競馬場の中ではアクセス環境の良い競馬場なのだ。絶好のロケーションなのに人が集まらないのはなぜか、それを考えねばならない。
- 課題2 インターネットでの情報提供を拡充する!
- 年金でチマチマ遊んでくれる年配のお客さんは、地方競馬の上得意客。大事にしなければならない。しかし、その小銭だけでは、競馬場の経営が成り立たないのが現実だ。パソコンで、ケータイで、興味を持ったレースの馬券が簡単に購入できるこの時代。若年層の競馬ファンを園田・姫路の競走に惹きつけるには、インターネットを使った情報提供が不可欠である。
- 園田競馬にも公式ホームページがあるが、その情報は質的にも量的にも決して十分とは言えない。他主催者の公式ホームページと比較すればなおさら貧相だ。たとえば道営競馬のホームページでは能検の動画配信が行われている。デビュー前の2歳馬や長期休養明けの古馬など、出馬表の馬柱だけでは到底チェックできない個体情報をインターネットで開示するという取り組みは、これまでファンが手を出しにくかった競走を販促し、既に一定の効果を挙げている。
- 笠松競馬のホームページは、能検の動画こそないが時計を掲載している。また、JRAや地方他地区への遠征馬について、直前の追い切り情報を掲載している。他地区の馬券を買っても地元に直接の利益はほとんどないが、ファンが地元の馬に愛着を持ってくれたなら、その馬が地元で走る次回以降の利益に直結する。また、所属馬がどのように調教されているのかという情報の公開は、預託を検討している馬主にとって有益であり、馬不足を解消する手立てになる。
- インターネット投票の方法や場外発売の日程だけを告知しても意味がない。どんなレースが買えるのか、どんな馬が走るのか、どこが見所なのか、店舗の告知と同時に商品の宣伝をしなければならない。園田競馬のホームページでも重賞競走の直前情報を掲載しているが、週に30余レース、月に120余レースある中で、月に一度あるかないかの重賞競走だけを売り出していても梨の礫である。根本的に、情報量が不足していると言わざるを得ない。
- インターネットからは少し離れるが、情報公開という点で努力されたい部分は他にもある。たとえば、上がり3ハロンなどの詳細な時計を計測・公開してはどうか。個人的には、園田のように直線が短く差しも決まる競馬場の予想は、持ち時計の比較で十分だと思っているが、テンのラップがあれば展開予想がしやすくなるし、終いのラップがあればクラス替わりした馬にメドを付けやすくなると思う。計測器を置くだけでできること。金がないなら、馬主にカンパ募ってくれてもよい。
- 課題3 GⅠに売上依存しないこと!
- 課題というより警鐘かな。注目を集めるレースは、当然、売上も大きくなる。特にJBCともなれば、成功・失敗を問わず園田競馬場では近年ありえなかった金額が動くレースになる。しかし、売れるからといって、施行数は決して多くない一部の大レースの売上に依存した経営は禁じ手である。
- 競輪の話になるが、年間売上のかなりの部分を「ふるさとダービー」が占める競輪場がある。「ふるさとダービー」の売上で競輪場の経営が成り立っている状態だ。数日間の収益で、年間の収支を転換させることもある、これが大レースの力である。だが、「ふるさとダービー」といえども、必ずしも売れるという保証はどこにもない。人気一本被りで妙味が無くなることもあれば、有力選手が怪我で戦線離脱してしまうこともある。ひとたびメインレースの売り上げが振るわなければ、それが競輪場の年間収支に直結してしまうのである。
- ここで中央競馬をみてみよう。一競走あたりの売上が最も多いのは年間20数レースのGⅠ競走、中でも3歳の頂点を決める日本ダービー、暮れの風物詩として定着している有馬記念、春秋の行楽シーズンに組み込まれる天皇賞である。だが、ギネスブックにも載るほどの売上を誇る有馬記念でも、JRAの1年間の売上に占める割合は数パーセントに過ぎない。昨年の有馬記念は執拗かつ露骨なディープ騒動への競馬ファンの反感のため売上が落ちたが、有馬記念の売上がJRAの経営に与えるダメージはそれほどではない。JRAにとって深刻なのは、年間を通じてまんべんなく売上が伸び悩むところにある。
- 毎年、園田でJBCをやれるものではない。大きい額が動き目も眩むところだが、2つのGⅠと、その日・その週の売上に味を占め、ビッグレースに依存することを覚えないでほしい。どこかの競輪場のようなことをやっていると「大レースがコケたら他も皆コケた」という事態になりかねない。GⅠを引っ張ってきてお祭りするのは大いに結構であるが、地道に1つ1つの競走の価値を上げていくことが大切ということを忘れないでほしい。
- 課題4 地元馬、なにがなんでも頑張らなアカンで!
- 園田のGⅠは、園田の馬が頑張ってこそ盛り上がる。これは課題ではなく義務といってもよい。
- 強い遠征馬、それを迎え撃つ地元馬。それが交流GⅠの醍醐味である。いま「中央の二軍」なんて看板は屁の役にも立たない。メッカと呼ばれた競馬場のプライドを見せねばならない。どんなに可能性が低くとも、チャンスはある。やるっきゃない!
- 「GⅠをやりたい」というのはファンとしての夢、馬主としての夢は「GⅠに出たい」である。馬主になって3年目。今年はラスカルスズカの産駒がデビューするので、昨年は新馬を買わずに貯金した。せっかく馬主になったのだから、好きだった馬の仔を持ってみたいもの。血統的にもダートの中距離で走る仔を出しそうだし。ずっと探してるんだけど、なにしろ産駒総数が20数頭。馬の買値とかランニングコストとか色々あって、園田で走らせることのできる産駒が見つからない。去年、道営と岩手にパイプが作れたので、園田が無理なら向こうで走らせてもいいかなとか考え中。こればっかりは今の時点では何とも言えないけど、いい馬と巡り会って、園田のJBCに使えたらなぁと、妄想する権利くらいは掴みたいものである。
- 園田の古馬の顔ぶれを見渡すと、かなりの高齢化が目に付く。重賞ともなれば、中央の準オープンあたりから都落ちしてきた6、7歳馬が有力馬の一角を占めている状況で、園田の生え抜きの馬は、園田に居続けなければならない理由というのが必ずあって、どこかに爆弾を抱えていたり、故障がちだったりする。それゆえ生え抜きで順調に走り続けたロードバクシンの偉大さが際立ってきたわけだが、そのロードバクシンも間もなく現役生活を終え種牡馬となる。
- 現時点で、園田には、JBCを迎えるにあたって確たる代表馬がいない。中央で名前の売れてしまった馬を連れてきても、「園田の馬」と胸をはることは難しい。かといって、生え抜きのスターが出る可能性もゼロに近い。JBCに出走できるのは今夏デビューする現2歳世代まで。今年の新馬にかかる期待は、私の持ち馬がどうのこうのという問題は横においても、非常に大きい。
- 課題5 インフラは大丈夫かね?
- せいぜい詰め込んでも2万人が限界じゃないかな。いや、2万も入ったら床が抜け落ちるんじゃないか。売店も足りないよね。露天出して対処するんだろうけど、それやると既存の売店から抗議が来るよ。それと、盆正月の開催ですら人が溢れて手に負えないあの食堂で、どうやって人数を捌くつもりなのか。昼飯が食えるようにしないと、朝から客が来てくれないよ。
- そうそう、カメラ小僧。アイツらが陣取ると本馬場が見えなくなる。中央と違って直線が短いから、ゴール板のカメラ小僧を避けて4角寄りに立つといっても限界がある。カメラ小僧は本当に邪魔だ。マナーを守って撮影している良心的なカメラマニアの肩身が狭くなる。何か手はないか。
- もう一つ。ファンファーレを録音し直そうよ。30年くらい前のラジオの録音みたいに、音がくすんでるでしょ。いいメロディーなんだから、阪急百貨店の人にお願いして、綺麗な音質で録り直そうよ。ついでに場内の音響を整備してと言いたいんだけど、金かかるから無理だな。
- 課題山積み。でも、ちょっと嬉しい。昔は毎日、ゴッタ返していた。勢い余って競馬場に火を付けてしまうほど活気溢れる競馬場だったのだ。
夢の実現に至るには、脈々と受け継がれた時代の蓄積があった。かつてこの競馬場は“アラブのメッカ”と呼ばれ、全国のアングロアラブが集まり日本一の称号を競い合った。時代は移り変わり、今では園田の馬場をサラブレッドが走っている光景にもすっかり違和感を覚えなくなった。しかし、この競馬場は、今もそこかしこに、旧き良き時代の競馬と昭和の鉄火場の風情を垣間見ることができる。
「アホ!」、「ボケ!」、「カス!」、人気馬が負けると容赦ない野次が飛ぶ。落馬したジョッキーに「シネ!」という危ない人もいる。だが、このキツい野次の中で競馬をすることで、この競馬場の所属騎手は類い希なるタフな精神力を身につける。“世界の岩田”は、この環境が育て上げた傑作である。見込みのない奴にはヤジなど飛ばぬ。園田のヤジには愛がある。
聞こえてくるのはヤジだけではない。馬と騎手の息遣いが聞こえる。騎手が鞭を振ると、風を切る音が聞こえる。サラブレッドが深い砂を蹴り上げ、猛スピードでコーナリングする。その迫力は何物にも代えがたく、ダートコースが芝コースを跨いだ向こう側、内回りに閉じこめられているJRAの競馬場では決して見ることのできない“LIVE”がある。だから、園田競馬は面白い。
夢だった、園田のGⅠ。私の夢を叶えるためにやってくれたことではないにせよ、JBCを誘致した組合の英断に感謝したい。このJBCをなんとしても成功裏に終わらせることで恩返しにしたい。












